実は、僕自身過去を振り返ることは好きではありませんでした。
過去は過去として過ぎ去ったものに対して、自分の進むべき未来には過去を振り返る必要がなく、思い出すと過去の中で生きていることになってしまうのでは、とさえ思っていました。
ただそれは、過去は見て見ぬふりというでよいという思い込みと価値観も同時に宿しました。
そこにいたありのままを残すこと。
「映像を残すこと」がどれほど幸せなことなのか、最近ようやく実感するようになりました。そして、改めて気づいたのは、どんなに大切に心の中にしまっておいたつもりでも、いつの間にか大切な景色は少しずつ忘れてしまうということです。けれど、映像があるからこそ、その瞬間を今でも鮮明に思い出し、感動を再び味わえることの尊さを感じます。
父との思い出は日常のこと。
5年前に亡くなった父との姿で思い出すのは、テレビで野球を見ている父。朝野球をしている父。現場で、職人さんと会話している父。全て家から半径10km圏内での日常的な姿でした。
そこでの振る舞いや姿勢がぼくの記憶に残っており、今となっては自分の無意識の価値観になっていることに気づきました。
つまり、日常の中に今の自分の価値観を築いてきた原体験がたくさんあったのです。